院長ブログ
おたふくかぜについて
おたふくかぜはムンプスウイルスに感染することで熱が出て耳の下にある耳下腺が腫れて痛くなる病気です。だいたいは経過良好なのですが、膵炎や髄膜炎をきたして入院治療が必要となる、精巣炎をおこし男性不妊の原因になる、耳が聞こえなくなる(難聴)などの合併症もあります。
これらの合併症を防ぐにはおたふくかぜワクチンを接種するのが一番で、2回定期接種を行っている国ではおたふくかぜが99パーセント減少したとされています。日本では日本小児科学会などが以前から要望書を国に提出していますが、まだ定期接種ではなく任意接種のままで有料です。
合併症の中で難聴は極めてまれなものであり、万一発症しても片側のみの失聴で大きな問題がないとされてきましたが、2015年から2016年のおたふく風邪の流行時に日本耳鼻咽喉科学会が調査したところ2年間で359人のムンプス難聴の報告があり、詳細の明らかな335人中305人は障害が残り一側難聴の263人、両側難聴の13人が高度難聴以上になっていました。この調査で、ムンプス難聴は決して稀ではなく、一側難聴でも学校生活等で多くの困難を感じていることが明らかとなりました。日本以外の多くの国では、おたふくかぜはすでにワクチンによりほぼ制圧された疾患となり、ムンプス難聴患者の発生もほぼなくなってきています。
おたふくかぜワクチンは任意接種なので接種年齢の決まりはありませんが、日本小児科学会は1回目を1歳時に、2回目を小学校入学前の1年間に接種することを推奨しています。
[2022-02-25]