院長ブログ
小児救急支援アプリについて
子どもさんの具合が突然悪くなった時あるいはケガをした時に、救急車を呼ぶのか、自分で病院に行くのか、様子を見ても大丈夫なのか、判断に困るときがあります。そんな時に、大阪大学医学部、大阪市立大学医学部、大阪市消防局が共同で開発した「小児救急支援アプリ」が役に立ちます。今のところ、スマートフォンとタブレットのみの対応でパソコンでは使用できませんが、小児救急支援で検索してアプリをダウンロードすることで誰でも使用することができます。
例えば6歳の男の子が熱を出したとします。年齢と性別を入れて、「発熱」を選択すると、症状選択の2つ目の画面にうつり、ここで、「暑いところにしばらくいた。激しい運動の後。」を選ぶと。3つ目の画面に移動、「体温39℃以上。または皮膚が赤い。」をタッチすると119番通報と出て、119番発信のボタンをタッチすると消防局につながります。
救急度が高い場合は119番通報、救急度が中程度の場合は救急安心センター大阪に相談、救急度が軽度の場合は近くの医療機関の検索をすることができます。
かかりつけの医療機関にこのアプリについてのパンフレットが置かれていると思います。一度、ご覧になってください。
呼吸困難(息苦しい)について
今日は、呼吸困難(息苦しい、息がしにくい)についてお話しします。呼吸困難はいわゆる「自覚症状」といって患者さんが「息がしにくい、息ができない」と訴えられて初めてはっきりする症状です。ですから、小さな子どもさんや赤ちゃんの場合は、まわりの大人がきづかないといけないわけです。呼吸困難をおこす病気としては、RSウイルスでおきる細気管支炎、気管支ぜんそくの発作、クループなどがありますが、いずれの場合も下の図のような症状が認められます。機嫌が悪い、寝かそうとすると起きてくる、ゼーゼーいっているなどの上の図のような症状があれば、服を脱がせて、下の図のようなことがおきていないか見てみてください。例えば子どもさんに気管支喘息があって何回か経験されていれば、お家で様子を見られるかどうか判断できるかもしれませんが、はじめての呼吸困難であれば、休日・夜間でも医療機関を受診してください。
この子だけは、ほんま分けわからん、なんでやろ?
こどもさんがたくさんいるお母さんのなかに、時々、上のようなことを訴えられる方がいます。
たとえば、A君(中2)、B君(小6)、Cちゃん(小4)、D君(小1)の男3人、女1人の四人兄弟でお話をすすめましょうか。
お母さんが、ちょと困ったと思っているのがB君です。
A君は最近生意気になってきて、ひとつも言うことを聞きませんが、怒るとしばらくしてから、べたべたとくっついて来たりします。「きも!」とお母さん口では言いますが、まだかわいいとこもあんねんなと、ちょっとホッとします。
Cちゃんは女の子ということもあり、買い物もよくいっしょに行くし、学校の話もよくしてくれて全然心配なし。
D君は末っ子で甘えん坊さん、甘えるのもじょうずで、何かおねだりされると「しゃないあな。」と思ってしまいます。自分でも、甘いなとお母さん時々反省。
さて、問題のB君です。お母さんにすると、ほかの3人に比べると、なんか子どもらしくない、無理をしてるような気がするのです。そもそも、ついついほかの子と比べてしまうのが自分でもおかしいなと思っています。ほかのお母さんたちはB君のことを挨拶もできて、素直で、CちゃんやD君の面倒もよく見ている、いいお兄ちゃんといってくれます。もちろん、お母さんも近所で誰一人悪く言わない、いいお母さんなのです。
ある日、たまたま、子どもたちが早く寝て、久しぶりにお父さんと二人の時間をもてました。そこで、お母さん、思い切ってお父さんにこの話をしたのです。すると、お父さん、じっくり話を聞いた後、「そら、あたりまえやがな、人間には誰でも相性ちゅうもんがある。4人も子どもがいたら、一人くらい、なんかようわからん子がいてもいいんちゃうか。そういうたら、お前、Bにはなんか遠慮してるみたいなところがあるんちゃうか。そんなんが、相手にも伝わるんやで、まあ、あんまり気にせんとき、わしは、子どものなかでBのことが一番ようわかる気がする、似とるんかな。」と言ってくれました。
その日を、境に、お母さん、このことをあまり気にしなくなり、B君が中学に入り、早めの反抗期を迎えたころから、丁々発止とやりあえるようになったとのことです。
熱性けいれん
子どもさんが熱を出した時、心配事の一つに「けいれん(ひきつけ)」を起こさないかということがありますね。子どもの100人に7~8人位が経験すると言われており、生後9か月から3歳くらいの子どもに多いとされています。熱が出た日、あるいは次の日位に多く、時にはひきつけて、はじめて熱があることに気づくこともあります。急に、手足をつっぱったり、ガクガクさせて、白目をむき、顔色が悪くなることもありますが、通常はなにもしなくても数分でとまります。数分以内に止まらないようなら、救急車をよんで病院に行きましょう。
ひきつけを起こした時は、吐くことがあるので、吐いたものがのどに詰まらないように顔を横に向けてそっとしておいてください。口の中に物を入れたり、体を揺さぶったりしてはいけません。落ち着いてと言っても簡単ではないですが、けいれんがどのくらい持続するか、どんな様子か(片方だけのけいれんではないかなど)を観察してください。救急車で病院に運ばれたときにはけいれんは止まっていることがほとんどなので、親御さんからのこれらの情報がその後の診断や治療に必要になってきます。スマホでけいれんの様子を撮影するのもいいかもしれません。
熱性けいれんの原因ははっきりしませんが、両親のどちらかが、小さい時に熱性けいれんを起こしたことがある場合が多いようです。熱性けいれんで後遺症がおきることはありませんし、7割以上の子どもは1回きりで、繰り返すことはありません。繰り返すようであれば、予防のためにお薬を使う場合もあるので、主治医の先生の指示に従ってください。
4月から保育所です
4月から保育所です
4月から保育所に行く子どもさんをお持ちのお母さんへ、
去年の今頃おとどけしたブログです。
4月に入りしばらくすると、熱をだしたり、下痢や嘔吐で体調をくずす子どもたちが増えてきます。その中のかなりの割合を4月から保育所生活をスタートした子どもたちが占めます。その理由は、保育所で今までかかったことのない色々なウイルスによる病気をもらってくるからで、診察室でお母さんは、「何のために保育所に入れたかわからへん」となげき、おばあちゃんは「やっと、孫の面倒みんで済むようになったと思ったのに、前より大変や」とぼやくことになります。ひどいときは、元気になって保育所に行ったと思ったらもう次の日に熱をだすなんてこともあります。「今までこんなにもしょっちゅう熱ださへんかったのに、何か悪い病気ちゃうやろか?」と心配される家族の方もおられますが、いつかは罹る病気に今なっているわけで、かかりつけの先生が何も言わなければ大丈夫です。
インフルエンザ大流行
インフルエンザ大流行
インフルエンザが流行っています。国民の1割がかかったともいわれており、これを読んでいただいている方々のなかにも、かかった方も多いのではないかと思います。今年は、早くから流行が始まり、A型とB型が同時に流行したことが特徴だと言われています。
何故、こんなに流行ったのか。いくつかの理由があげられています。①B型に対する抗体を持っている人の割合(抗体保有率といいます)がもともと低いため、B型の流行が広まった②ワクチンの製造が遅れ、流行期までにワクチンを打てなかった人が多かった③カナダではA型インフルエンザのH3N2型に対するワクチンの効果が低かった。等々です。
いずれにしても、かからぬよう「予防」が大事です。手洗いにマスク、そして、水分をこまめにとること、歯磨きなどが効果があるといわれています。手洗い以外は効果に疑問があるとの意見もありますが、いずれも、さほど難しいことではないので、よいことはやっておいた方がと個人的には思います。
嘔吐下痢(吐き下し)
嘔吐下痢(吐き下し)
今年はあまり流行っていませんが、冬場は嘔吐下痢(吐き下し)をおこすウイルス感染症が流行ります。ロタウイルス、ノロウイルスなどが有名です。これ以外にも、嘔吐下痢症をおこすウイルスはいっぱいあって、原因ウイルスが特定されても抗インフルエンザ薬のような特効薬はないので、診断する意味はあまりないと個人的には考えています。
大事なのは、皆さんもご存知のように「脱水症」になるのを防ぐことですが、この「脱水症」もマスコミ等に取り上げられすぎて、家族の方の不安を掻き立てているような気がします。実際のところ、受診時に明らかな脱水をおこしているお子さんはほとんどいません。
脱水をおこしていても、軽度や中等度の脱水症であれば、経口補水液による治療が勧められており、点滴をするのは、まったく口から飲めない場合や、腸閉塞などが疑われる場合、脱水が重度の場合のみになってきています。
ネットには、重度の脱水の徴候をわかりやすく書いてあるものが少ないので、参考に以下に挙げておきます。
1. 泣いても涙がでない
2. 口や舌がネバネバをとおり越しカラカラ
3. 目が落ちくぼんでいる
4. 呼吸が速く、ウトウトしている、機嫌が悪い
5. 一日に6回以上大量の水のような便が出る
6. 緑色の嘔吐や、血の混じった便がでる
7. 皮膚が冷たくて白っぽく色が悪い
8. 3か月未満の赤ちゃんでは38度、3か月から36か月では39度以上の熱がある
こどもの頭痛
こどもの頭痛
こどもが熱もないのに「頭が痛い」と訴えると、親御さんはすごく心配になります。こども、特に小さなこどもが「頭が痛い」なんて、きっとなにか大変なことが頭の中に起きているのではないかと不安になるのではないでしょうか。
こどもの頭痛で熱がない場合、意外と多いのが「片頭痛」です。大人の片頭痛の場合は「前兆」といって「ピカピカひかる星のようなものが見える」などの症状が頭痛に先立って出たり、片頭痛というぐらいなので右とか左とか片方が痛いことが多いですが、こどもの場合は前兆があることも少なく、こめかみのあたりが両方痛いことが多いようです。家族に片頭痛がある場合が多く、お母さんやまわりの家族に片頭痛があると、年齢が小さくても、本人が「ああこれが頭痛(あたまいた)や」と気づきやすいようです。
頭痛のために思いっきり遊べない、学校に行くのがちょっと「いややな」など、日常生活に支障があるような場合は、かかりつけの先生に相談してください。
「おねしょ」と「夜尿症」
皆さんは「おねしょ」の記憶がありますか。私の場合は、確か中2の冬が最後だったと思います。ネットでみると、大人の人の「つい最近、やってもたー」という投稿もありますね。いつでしたか、「夜尿症」が専門の先生の講演で、成人でも「夜尿症」はあるけれど、頻度は不明と言われていたのを記憶しています。
「おねしょ」と「夜尿症」はどこが違うかというと、日本夜尿症学会という学会で「5歳を過ぎても月に1回以上で3か月以上続く場合を夜尿症と診断する」と定義しています。5歳未満なら毎日あっても「おねしょ」ですし、小学生で年に1回なら「おねしょ」ということです。
この定義でいくと、5歳では5人に1人、10歳でも20人に1人に「夜尿症」が見られるそうです。
2016年に、さきほどの夜尿症学会から「夜尿症診療ガイドライン」が発表され、小学校にはいってからも「夜尿症」が続く場合は、本人と、ご家族が希望される場合は、積極的に治療を開始することが推奨されています。
積極的に治療することで「夜尿症」が早く治るとされており、「おねしょ」で悩んでおられる方は、かかりつけの小児科の先生に相談されるとよいかと思います。
川崎病について
赤ちゃんが熱を出す場合、たいていは咳や鼻水をともない風邪であることが多いのですが、咳も鼻水もなく、熱が続く場合、気をつけておかなければならない病気の中に「川崎病」があります。この病気は、川崎富作先生という日本人が見つけた病気で、世界中で「Kawasaki disease」という病名が使われています。川崎病の場合、心臓を栄養する冠動脈というところに炎症が起こり、一部の人ですが、動脈瘤ができて心筋梗塞を起こす場合があります。この冠動脈の病変を防ぐために、熱が出始めて7日までにガンマグロブリンを点滴することが推奨されています。
川崎病にはいくつかの特徴的な症状があり、6つの症状のうち5つがそろえば川崎病と診断されます。その症状とは①5日以上続く熱②目の充血③真っ赤な唇、イチゴのような舌④発疹⑤手足が赤くなりテカテカパンパン⑥首のリンパ節が腫れるの6つですが、これ以外に赤ちゃんではBCGをした周囲の皮膚が赤くなることも川崎病の診断に役に立ちます(下図)。症状の中には診察の時には消えてしまっていることもあるのでご家族からのお話しが大事です。