院長ブログ
子どもの事故について
子どもが事故で亡くなるなんて考えたくもないことですが、実際には不慮の事故死は子供が死亡する原因の常に上位を占めているのが現実です。不慮の事故と言いますが、なかには防げる事故もあるとされており、子どもの事故防止のキャンペーンが消費者庁などを中心として行われています。
平成22年から26年の5年間の統計では14歳以下の不慮の事故死は全部で2,030件もあり、うち0~6歳が64%、0歳だけで25%を占めています。
夏になると、水難事故の報道が毎日のようにありますが、上の5年間では溺死が466件あり、よく報道される川や海、プール等の屋外の事故が189件(40%)と最も多いのですが、浴槽内での溺死が165件(35%)もあり、このうちの大半が0~1歳の乳幼児です。「一人で入浴していて、様子を見たらうつぶせで浮かんでいた」、「親と一緒に入浴し、少し目を離した時に、うつぶせで浮かんでいた」などと報告されています。また、お風呂に水を張ったまま風呂の蓋をしなかったために頭から落ちて亡くなる場合もあります。
子どもを育てているとヒヤリとする場面を何回か経験することがあると思います。そのような場面を知っておくだけで事故防止につながると思いますので次回にそのお話をしたいと思います。
予防接種スケジュールの変更点
日本小児科学会は推奨する予防接種スケジュールをホームページにのせており、会員以外の方も見られるようになっています。まだ一般的にはなっていませんが、2018年8月1日版で変更された点について解説します。
1)学童期以降の百日咳とポリオに対する免疫を維持するために、就学前(MRワクチンの2期と同じ時期)の3 種混合・不活化ポリオワクチンの追加接種についての推奨(任意接種)を加えました。これは、定期接種の4種混合ワクチンをきちんと接種していても、就学前に抗体価が下がってきていることがわかっており、小学生の百日咳罹患が増えてきているためです。特に4種混合ワクチンが済んでいない小さな赤ちゃんがおられるご家庭では接種を考慮されるとよいかと思います。
2)11-12歳で接種する2種混合ワクチンの代わりに、 3種混合ワクチンでも追加接種ができること(ただし任意接種)を記載しました。これも百日咳の予防のためです。
いずれも任意接種ですので、かかりつけの先生と相談の上、接種するかどうか決めてください。
ワクチンの定期接種と任意接種の違い
定期接種のワクチンは「予防接種法」という法律で決められたワクチンで現在10種類あります。決められた期間に接種するよう定められており、その期間に接種すれば費用は無料です。一方、任意接種のワクチンは国の認可は受けていますが、先ほどの「予防接種法」には定められておらず、費用は原則個人負担です。また、ワクチン接種によって副反応が起きたときの補償が定期接種の場合の方が手厚いという違いもあります。
任意接種のワクチンとしては現在、ロタウイルスワクチン、おたふくかぜワクチン(ムンプスワクチン)、インフルエンザワクチンの3種類がありますが、いずれも効果と安全性が十分確認されており、定期接種ワクチンと同様、小児科学会が推奨するワクチンスケジュールに含まれています。
おたふくかぜワクチンに関しては、おたふくかぜの合併症として1,000人に1人の割合でおきる難聴を予防することが知られており、接種を希望される方が増えてきています。小児科学会が推奨するワクチンスケジュールでは、1歳と年長さんの2回接種が推奨されています。詳しくはかかりつけの先生とご相談ください。
VPDてなんのこと?
VPDはVaccine Preventable Diseasesの略で「ワクチンで防げる病気」ということです。
ワクチンが作られている病気は、その病気にかかると死亡したり後遺症が残ったりする可能性があるのであらかじめ予防することが重要と考えられているのです。日本における主なVPDを表に示します。
ワクチンを打つと打った人だけが感染症から守られる(これを個人防衛と言います)だけでなく、多くの人がワクチンを受けることで社会全体から感染症が減り、ワクチンを受けていない人も守られる(社会防衛)ことになります。その例として古いデータですが、日本ではその昔小学校でインフルエンザワクチンの集団接種を行っていました。その後、色々な理由で集団接種は中止になりましたが、小学生が集団接種を行っていた期間では、行わなくなってからと比較してお年寄りのインフルエンザ関連の死亡が有意に減っていたことが証明されています。
主なVPDs
日本国内で広く一般的にワクチンが接種が行われているもの
B型肝炎 結核
ロタウイルス 麻疹(はしか)
インフルエンザ菌b型(Hib) 風疹(三日はしか)
肺炎球菌 水痘(みずぼうそう)
ジフテリア ムンプス(おたふくかぜ)
ポリオ(急性灰白髄炎) 日本脳炎
破傷風 ヒトパピローマウイルス
百日咳 インフルエンザ
卵アレルギーと予防接種
ワクチン製造過程で卵そのものを使用しているインフルエンザワクチンに関しては、ワクチンに微量の卵由来成分が残存しているため、アレルギー症状が稀におきることがあるので、卵アレルギーの人は接種要注意者になり、私も含め、多くの医師が、卵を食べて症状が出たことのある子どもさんや、検査が陽性で卵をたべたことがない子どもさんにはインフルエンザワクチンを接種しないのを原則としています。
一方、MRワクチンや、おたふくかぜワクチンはニワトリ胚細胞を使っており、卵そのものを使っていないので、卵アレルギーがあっても接種が可能ですし、子どもたちが打つことになっているその他のワクチンも製造過程に卵を使用していないので、接種可能です。
4月から保育所です
4月から保育所に行く子どもさんをお持ちのお母さんへ、
去年の今頃おとどけしたブログです。
4月に入りしばらくすると、熱をだしたり、下痢や嘔吐で体調をくずす子どもたちが増えてきます。その中のかなりの割合を4月から保育所生活をスタートした子どもたちが占めます。その理由は、保育所で今までかかったことのない色々なウイルスによる病気をもらってくるからで、診察室でお母さんは、「何のために保育所に入れたかわからへん」となげき、おばあちゃんは「やっと、孫の面倒みんで済むようになったと思ったのに、前より大変や」とぼやくことになります。ひどいときは、元気になって保育所に行ったと思ったらもう次の日に熱をだすなんてこともあります。「今までこんなにもしょっちゅう熱ださへんかったのに、何か悪い病気ちゃうやろか?」と心配される家族の方もおられますが、いつかは罹る病気に今なっているわけで、かかりつけの先生が何も言わなければ大丈夫です。
大阪で麻しん(はしか)がはやっています
すでに、テレビや新聞で報道されているのでご存知でしょうが、大阪で麻しんが流行しています。大阪府感染情報センターから「大阪府内の麻しん急増に関する情報」が発表されており2月28日付の情報では、「大阪府では2018年末から麻しんの報告が続いており、2019年に入り増加している。2019年第1週~8週までに府内18保健所から計96例の報告があった(2019年2月24日現在)。」とのことです。東大阪市からも2月6日に2例、2月19日に1例の報告がありました。96例の中にはワクチンを2回接種されているにもかかわらず発症した方もおられますが、いずれも軽症であり、この方たちからうつった方はいないことから、ワクチンを2回接種することが病気の軽症化と流行の拡大を防ぐために重要であることがあらためて明らかになりました。
大阪府感染情報センターによると「大阪府は国内外の観光客も多く、今後、春休みなどで人の往来が活発な時期を迎えることを踏まえると、今後も麻しんの免疫が充分でない者が、麻しんウイルスに感染するリスクがある。定期予防接種の徹底に加え、医療従事者、教育関係者、また、空港・ホテル・百貨店・娯楽施設などで不特定多数と接する機会がある者は、特に麻しん含有ワクチンの接種を含めた対策が重要となる。」としています。
先天性風疹症候群の赤ちゃんの届け出がありました
1月31日に厚生労働省が、昨年の10月4日のブログで書いていた、妊婦さんが風疹ウイルスに感染することで胎児も感染し障害が起きる「先天性風疹症候群」の男の子の届け出が、埼玉県からあったと明らかにしました。風疹の流行があると当然予想されていたことではありますが、本当に残念なことです。
厚労省の報告では、妊婦さんは風疹ワクチンを接種していたとのことですが、予防接種をしていても抗体が十分につかないこともあり、やはり、すべての世代がワクチンを打ち免疫を付けることで、風疹の流行を防ぐことが重要であるとしています。
前回のブログにも書きましたが、今回の風疹の流行は30~50代の男性が中心です。当診療所にも少ないですが、成人男性の方が風疹ワクチンの接種に来られます。もちろん、奥さんにうつさないようにという方もおられますが、職場に女性が多いのでとうちに来られる意識の高い方もおられます。
厚労省は3年かけて風疹ワクチンの原則無料の定期接種を進めるそうですが、以前にも同じことが起きていたのですが・・・・
RSウイルス感染症について
RSウイルス(RSV)に感染すると、2~8日の潜伏期間後に風邪の症状が出現します。これらの症状は1週間程度をピークとして回復傾向に向かいます。しかし、RSウイルス感染症の後に気道が過敏になり、風邪をひくたびにゼイゼイすること(喘鳴:ぜんめい)を繰り返すようになることもあります。
RSVの流行が騒がれるのは、乳幼児とくに生後6か月以内の乳児で細気管支炎、肺炎をおこし、呼吸困難のため入院する場合があるためです。国立感染症研究所のホームページには、「RSVは乳幼児における肺炎の約50%、細気管支炎の50〜90%を占めると報告されており、より年長の小児においても気管支炎の10〜30%に関与していると考えられている」と記載されており、また、「低出生体重児や、あるいは心肺系に基礎疾患があったり、免疫不全のある場合には重症化のリスクが高い」とも記載されています。
しかし、実際に入院するのはRSVに感染したこどもの1%程度ですので、むやみに心配する必要はありません。RSVにかぎらず、風邪かなと思っていても、咳がどんどんひどくなる、ゼーゼー・ヒューヒューいっている、横になって寝むれない、息づかいが粗い、肩で息をしている、などの呼吸困難が疑われる症状があれば早めに受診しましょう。
風疹が首都圏で流行っています
風疹は風疹ウイルスが感染することでおきる病気で、発熱、発疹、首のリンパ節が腫れるなどの症状がありますが、症状がはっきりしないことも多く見過ごされがちな疾患です。最近ではMRワクチンが1歳と年長さんのときに打つことになっており子どもの風疹はまずありませんが、30歳~40歳台の男性ではワクチンを1回も接種していないため、免疫がなくこの世代を中心に風疹が流行っています。
風疹で注意したいのが、妊婦さんへの感染で、妊娠20週までに風疹ウイルスに感染すると、お腹の赤ちゃんにも感染し先天性風疹症候群(難聴、白内障、心臓の奇形など)になる危険性が高まるとされています。これを防ぐには、お母さんが風疹の抗体があるかどうかを検査してもらい、抗体がない場合は妊娠前に2回の予防接種を受けておくことが大切です。ただ、お母さんに風疹をうつすのは先ほどお話しした免疫のない世代の男性、すなわち、お父さんやお母さんの職場の男性達ですので、この方たちを中心に多くの人がワクチンを打ち、風疹の流行を起こさないようにすることも重要です。
風疹ワクチンについては、かかりつけの先生に聞いてみてください。